2010年1月9日土曜日

スカーフのおしゃれ

昨日、EL PAISでこんな記事を読んだ。El partido de Sarkozy prepara una ley para prohibir el 'burka' con multas de 750 euros、フランスの与党幹部がブルカ、ニカーブ着用を禁止する法令を準備し、違反した場合750ユーロ(約10万円)の罰金を課すという。ブルカやニカーブなどとは明示せず、「文化行事などを除いて公共の場所や道路で顔を覆うのを禁じる」というもの。エジプトに行って初めてヒジャーブという言葉を知ったけれど、イスラム女性のスカーフの違いはコチラ。



一番左 ヒジャーブ
イスラム女性の典型的なのが顔を隠さないスカーフ。
多くの女性がアイデンティティの象徴として着用する。

左から二番目 ブルカ
全身を隠す。目の部分が布の覗き穴になっていて、そこから見えるけれども外からは見られないようになっている。手まで覆われる。

真ん中 ニカーブ
ひざまで覆うが、目の部分は隠さない。目の部分はほかのベールを組み合わせる。

右から二番目 シェイラ
長方形のスカーフで、ペルシア湾地域で使用される。頭部を覆う。

一番右 チャドル
家の外でイランの女性が使う。身体全体を覆い、頭のスカーフと組み合わせることもできる。

サルコジ大統領は数ヶ月前に公式演説で、ブルカやニカーブのような服装は望ましくないと言ったそうだけど、オランダではすでに2006年公共の場所でのブルカ、ニカーブの禁止が法制化されている。2004年にはフランスで公立学校での誇示的な宗教的標章の着用を禁止する法律がつくられた。でも、フランスの立憲主義という伝統的立場からみると政教分離に基づいた公共教育の場での宗教的中立という説明はそれなりに理解できた。しかし、公共の場での全面的禁止というのは行きすぎな気がするが、ブルカやニカーブのような全身を隠す服装は「女性抑圧の象徴」だとして昨年、国民議会(下院)に調査委員会が設置された。

女性がそこにアイデンティティ価値を見出して自ら進んで着用するものを、他者の価値で判断するのは慎重にするべきだと思う。偏見が多いのも事実で、ドイツでは09年7月、マルワ・シェルビニさんはヒジャーブを着用していたところ隣人のロシア生まれのドイツ人男性に「テロリスト」などと侮辱されたため提訴した。そして、その審理がおこなわれていた法廷でその男に刺殺された。妊娠3か月だったシェルビニさんは18回も刺され、守ろうとした夫が守衛に誤って撃たれて重傷を負った(Murder of Marwa El-Sherbini)。

でも、抑圧されている状態に本人が気づいていない場合、もしくはおかしいと思っていてもなにもできない場合というのもある。そういう場合には積極的に他者が介入していくのも必要だと思うのは先日たまたま読んだ「誰かがわたしを壊す前に」の影響。

主人公のジャジーラは13歳の女の子。自分の恋人がジャジーラに興味があることに気がついた母親はジャジーラをテキサスに住むレバノン人の父親のもとに送る。父親のリファットはとても厳格な人。父親とブラジャーを買いに行くなんて思春期の女の子には地獄だけれど、そういう気持ちがリファットには全然わからないし、結婚前にタンポンを使うのも許さない。親なんだから娘にとっていいことを知っているという。彼氏が黒人だと知ると会うのを許さない。背けば殴る。

原題のTowelheadは頭に布をまいているアラブ人の蔑称。ジャジーラは学校の同級生からそう呼ばれる。そんな中、ジャジーラは隣のミスター・ヴォーソの10歳の息子のベビーシッターをしながらミセス・ヴォーソのタンポンを盗む。プレイボーイを定期購読しているミスター・ヴォーソは13歳のジャジーラには優しくしてくれるように見えるけれど、それは彼女の女らしくなりつつある身体に興味があるから。でも、ジャジーラはそれ以上の意味があると思ってしまう。逃げ場のない思春期の女の子は痛々しい。数年前にアカデミー賞を受賞した「クラッシュ」のように性、人種、宗教様々な価値観が多方面でぶつかりあう。

ちなみにこの本、Nothing Is Private(2007)というタイトルで映画化されている。アメリカンビューティーやシックスフィートアンダーのアラン・ボールが監督。MR.ヴォーソがアーロン・エッカートだ。


さて、ニカーブの着用に関してはエジプト国内でも去年喧々諤々の議論が交わされていた。エジプトは国民の90パーセントがイスラム教徒だけれど、ニカーブの着用に関しては意見が分かれる。大半の女性がヒジャーブを着用しているカイロでもここ数年ニカーブを着用する女性が増えている。

去年9月にイスラム教スンニ派の最高学府として世界各地にイスラム教指導者を多数輩出しているアズハル大学のタンターウィ総長が、「ニカーブはイスラームと全く関係がない」という声明をだした。そして、タンターウィー総長は10月にアズハル付属のすべての教育機関でのニカーブ着用を禁じ、教師が男性の場合にのみ許可するとした。同様に、アズハルのイスラーム教育機関に付属する大学の寮でもニカーブ着用を禁止した。また、ユスリー・ガマル教育大臣も今学期の冒頭、学校内でのニカーブ着用を禁じた1995年の教育省決定を有効にすると発表していた。

しかし、12月にはニカーブを着用することは自由の一つであり、いかなる行政部局であれ、その着用を全面的に禁じることはできないとして、ニカーブ着用女子学生の学生寮への入場を許可せよとの司法判決がでている。それに対しカイロ最大の大学の一つであるアインシャムス大学は、上告すると決定し、同判決の執行停止願いを提出することにした。

参照:エジプトの大学で女子学生のニカーブ着用が司法を巻き込む論議に

エジプトで友人が戒律の厳しいイスラム教国を旅行したときに女性専用ホテルのロビーでニカーブを着た女の人が口の部分の布をさっと外してニッコリ笑ったときに同性だけどすごくドキッとしたと言っていた。たしかにニカーブを着用している女性は謎めいていて艶かしい。でも、不気味だと考える人もいる。見えないほど見たくなる、想像が逞しくなるのだ。

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