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2009年9月15日火曜日

わしゃ、よう知っとった。

ロシアに行くなら読んでごらんと、武田百合子の「犬が星見た」をK島さんが貸してくれた。

ちょっとした瞬間を切りとる視覚的描写が秀逸で、読み進めていくうちに自分の頭の中に今まですっかり忘れていた旅先の出来事や風景の記憶がよみがえってきた。場所は全然違うのに、なんだか一緒に旅行をしている気分。

印象的なのが旅仲間の、錢高老人。口ぐせは「ロッシャはたいしたもんや。わしゃ、よう知っとったんじゃ」、1969年に80代でひとりツアーに参加してロシアに行くなんてたいしたものだ。言動はちょっと我儘なところもあるけれど事情をきけば単なる我儘でもなくて、周囲の人にもそんな老人を思いやる余裕がある。読んでいて思わず笑ってしまう。優しい気持ちになる。だから最後に作者のあとがきを読んでほろり。

「私だけ、いつ、どこで途中下車したのだろう。」

そういえば以前「ことばの食卓」も友人から勧められたことがあった。その時はふーんと受け流したけれど、興味がわいてきた。実際にロシアにいる時間は14時間ほどなのだけれど。



2009年9月7日月曜日

ロシア大使館


トランジットビザ取得のために飯倉にあるロシア連邦大使館に行ってきた。

ガチャンと大きい音をたてて閉まる鉄の扉をくぐりぬけ、ふたつある無機質なドアの右側、入口とある方を通る。進んでいくと領事部の玄関がある。玄関の前で携帯電話で話をしていたスーツ姿の男がこっちをチラっと見てタバコの煙をはきだした。

室内に入ると、ちょっと荒んだ雰囲気の簡素な事務的待合室。番号札をとって、椅子に座る。まわりに目をやると、目の前には日本のパスポートを10冊ほど抱えていてひとつひとつに目をやっている若い女の子。入口にはひざ丈パンツにポロシャツという姿で小型のアタッシェケースを持っている40歳前後の男性。地味な中年の女の人とサングラス姿に金髪のモヒカンがのびてしまった髪型のチャラいふたりの若者の三人組。呼び出し番号の電光掲示板の前でそわそわ慌てた様子で行ったり来たりしている(たぶん)アメリカ人男性。私の斜め前で文庫本を読んでいるトートバックを肩から下げた大学生風の男。

なんだか今にも密室殺人劇でも始まりそうな個性的な面子。

自分の番号が呼ばれたので三つある窓口の一つへと急ぐ。右二つが受付で、一番左が支払い窓口。一番右には大学をでたばかりという雰囲気の若いロシア人。バリバリに固められた金髪の七三がロシア連邦の公務員というイメージそのままでちょっとワクワクした。私の対応をした真ん中の窓口の人は日本人のような顔立ちの無愛想な男の人。こちらを下から上へじろりと睨めつけると書類をよこすようジェスチャー。メキシコの両替屋みたいにふたりの間はガラスで仕切られている。書類も直接コンタクトできないように目の前にある引き出しに書類をいれると向こう側でそれを引いて取り出す。

会話もインターホンで。片言の日本語で「名字が変わったことはないですか?」と訊かれ、「(ビザは)シングルでいいですね」と確認。最期に「いつまでに必要ですか?」と訊かれた。2週間後受け取りだと手数料はかからないので2週間後というと左側の支払い窓口に行くように頭で示された。

隣の窓口ではさっきまで妙にあせっていたアメリカ人が支払いをしていたのだけれど、ニコリともしない担当のロシア人女性に愛想良くヘコヘコしていた。その対比がなんだかおかしかった。私もその窓口で英語とロシア語で印刷されたレシートをもらった。

来た道を戻って外に戻った。鉄の扉が後ろでガチャンと閉まるのを聞きながら、なんだか異空間から日常に戻ったような不思議な感覚。私の対応をしてくれた人があの閉ざされた空間で急に苦しみ出して絶命、疑われるのは私を含めて待合室にいた面々。ロシア大使館に拘束されて、取り調べを受ける。そんなストーリーを想像してニヤニヤしながら六本木駅へと向かった。

2009年2月13日金曜日

どこかしらんが、そこへ行け、なにかしらんが、それをもってこい!



美しいお妃と結婚した殿さまがいました。
ところが、ゆっくりお妃に見とれるひまもなく、
ゆっくり話しあうひまもないうちに、別れなくてはなりませんでした。
お妃をのこして、とおくへ旅にでかけなくてはならなくなったのです。
しかたがないこと。一生だきあってばかりはいられない、というではありませんか。

どうですか、このさばさばした物語のはじまり。

ルイス・キャロルが少女たちにあてた手紙を集めた『少女への手紙』や
アンデルセンの『絵のない絵本』を読んで、
好きでもない男の人に彼自作の詩をおくられたような(そんな経験ないけど)
もしくは友達の彼氏が友達のためにラブソングを歌ってるのを横で見ているような
波打つロマンチックに辟易とした気持になった私にはこのさっくり感が魅力的。

というわけで、「大人にも読んでもらいたい絵本です」という風潮にのっかってみて
『ロシアの昔話』(福音館文庫)がすばらしくおもしろかったわけです。

えー?ひとつも努力してないんですけど、
と思わずつっこみたくなるようななまけものが成功する話。

おろおろするおおかみ。

うんとこしょ、どっこいしょ。

とくにお気に入りなのはどうやらロシアでは、地面にぶつかると鳥になれるらしいということ。「わし(鷲)は、地面にからだをぶつけて、りっぱな若者になりました」

キュートな動物。魅力的な言い回しにゾクゾク。飛躍する展開にワクワク。
イワンやフョードル・ツガーリンといった耳馴れない登場人物の名前も素敵だけれど、ペチカにババヤガーといった言葉の、意味が正確にはわからないけれど、どうやらそういうものらしいという心地よい置き去り感。
そうそう。子供のときは知らない言葉がでてくると一生懸命その前後の情報を拾って頭の中でその言葉の感覚を組み立てていたのでした。
(だからかな。辞書を使ってスペイン語を読んでしまうとこの組み立てる感覚がないのは)

2009年1月6日火曜日

ロシアと私の蜜月。



最近のロシアの指導者2人。

去年の夏ごろに友人との間で話題だったのは、
どっちか選ばなければいけないとしたら、
プーチン元大統領とサルコジ大統領、どちらと付き合うか。

未だ答え出ず。

と、思っていたのだけれど、今、wikipediaでプーチンに関する項目を読んでいたら、気になる箇所がチラホラ。

たとえば、

愛犬は「コニー」という名前であり、徹夜でお産の世話をしたこともある、とか。

発言集の、

「あれは沈んだ」
(2000年9月、ロシアの原子力潜水艦クルスクが沈み、乗員118人が死亡した事件について)

「かわいくてついやってしまった」
(2006年7月、クレムリン宮殿の中庭で少年のシャツをめくって腹にキスするというスキャンダルを起こす。後にこう釈明)

などなど。



脱げば草野仁並みの肉体に元KGBの黒い影。やっぱり無理かなとも思うけれど。
なんだかWikipediaで彼について記録し、編集する人々の歪んだ愛情からは目が離せません。

ちなみに子供のころはこんな感じ。



興味はあったものの5巻という量にずっと遠巻きに眺めていたカラマーゾフの兄弟を
友人の一声で読み始めました。

光文社の古典新訳文庫。訳の評判が高いだけあって、本当にサクサク読めます。
しかも、多数の登場人物をちゃんと認識できるのか心配していたのですが、
まず最初にそれぞれの特徴が詳しく丁寧に最初に書いてあるため、人物像がしっかり浮かび上がります。
恐れていたのが嘘のよう。

まだ1巻の半分くらいですが、今のところカラマーゾフ3兄弟のうち付き合うなら次男かしら。
それでも、5巻もありますし、今のところ本当に序の序なので、これから何が起きるやら。
最後にどうなっているかはわかりません。
あんなに利発で要領よさそうな子が何を抱え込んでいるのでしょう。

友人にはこの「付き合うなら」視点でものごとを考えるのを止めなさいと近頃怒られますが、
これがやってみると案外楽しくてついついやってしまうのです。妄想癖です。