ロシアに行くなら読んでごらんと、武田百合子の「犬が星見た」をK島さんが貸してくれた。
ちょっとした瞬間を切りとる視覚的描写が秀逸で、読み進めていくうちに自分の頭の中に今まですっかり忘れていた旅先の出来事や風景の記憶がよみがえってきた。場所は全然違うのに、なんだか一緒に旅行をしている気分。
印象的なのが旅仲間の、錢高老人。口ぐせは「ロッシャはたいしたもんや。わしゃ、よう知っとったんじゃ」、1969年に80代でひとりツアーに参加してロシアに行くなんてたいしたものだ。言動はちょっと我儘なところもあるけれど事情をきけば単なる我儘でもなくて、周囲の人にもそんな老人を思いやる余裕がある。読んでいて思わず笑ってしまう。優しい気持ちになる。だから最後に作者のあとがきを読んでほろり。
「私だけ、いつ、どこで途中下車したのだろう。」
そういえば以前「ことばの食卓」も友人から勧められたことがあった。その時はふーんと受け流したけれど、興味がわいてきた。実際にロシアにいる時間は14時間ほどなのだけれど。
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