髪の毛を切って染めた。髪の黒いガルマ・ザビになった。
↓こんな感じ。
定職につかず、ひとり部屋で年に一度の、しかもたった二日間のカーニヴァルで着るドラゴンの衣装をつくって一年のほかの日を過ごしている。主人公がそんな男となるとちょっと躊躇するけれど、どうしても読んでみたいと思わせるような不思議な引力があった「ドラゴンは踊れない」アール・ラヴレイス著、中村和恵訳(みすず書房)。こういう嗅覚はあまり間違ったことがない。
「ドラムが鳴り、抵抗のダンスが始まる。
世界の片隅に生きる人々の希望を賭けてバンドマン、
スラムのごろつき、そして恋する者達が踊る、
カリブ海文学の傑作。」
破滅的な抵抗の舞台はトリニダード・トバゴの首都ポートオブスペインの丘、カルヴァリー・ヒル。カリブ海の太陽の光と濃厚な夜の闇、むんとする空気に漂うカーニヴァルの音楽はカリプソとスティールパン。踊れなくても大丈夫。この本を開いたらそのまま文章のリズムとスピードに感覚をまかせたらいい。
「貧しさという鍵、それは魔法で守られたメダルだ。その魔力は彼らに神秘的な純血性を与え、彼らを抵抗運動の貴族にした、祖先が奴隷制の下でずっと保ち続け、マルーンとして、逃亡奴隷として、ブッシュ・ニグロとして、反徒として、止むことのない逃亡の中ずっと引き継いできた抵抗の、正当な継承者にしたのだ。
残虐な暴力の場から彼らを引き離してくれる逃亡を実行できないときは、彼らは奴隷制プランテーションのど真ん中で抵抗した、タバコとコーヒーと綿花とサトウキビの中で、自分たちの人間性を主張したのだ、考えうる限り、実行しうる限り最もすばらしい抵抗、サボタージュの行為によって。彼らは怠惰と愚かさと怠慢と無駄をひとつの宗教に仕立てあげた。洪水と台風と地震を讃えてホザンナを歌い、作物に損害と悪疫がもたらされるよう祈った。
奴隷解放後も彼らはそれをやめなかった。解放は彼らをより深い怠惰と無益に導いただけだった、あいかわらず人々を飲み込んではひき潰し、砂糖とココアとコプラを吐き出させ続ける植民地制度、この大製粉工場のひき割り麦となって帝国に益をもたらすのを彼らは拒否したのだ。だから彼らはこの丘にキャンプを張った、敵の眉毛の上に陣どって、変わらぬ熱情をもってもう一度あの教えを磨き、推し進めることにしたのだ、怠惰と怠慢と無為の三位一体を信奉するあの抵抗の宗教を。」
最後の1ページを早く読みたかったけれど、ページをめくるのがもったいない気持ちもある。読むなら4時間ほど集中できるような環境で一息に読むのがお勧めです。
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