2009年8月13日木曜日

遠くにありて想うもの



行ってきました、世田谷美術館で開催中のメキシコ20世紀絵画展。

フリーダの絵を期待していくと1点しかないからガッカリすると聞いていたのだけれど、実は今までちゃんとメキシコの絵画というものを見たことなかったのでいろいろ見られてよかった。特に壁画運動の3大巨匠はさすが。ディエゴ・リベラとシケイロスに関しては今まで政治的な部分、もしくはフリーダの旦那さんとしてしか感知してこなかったけれど、そうそう画家なんでした。

浮気ばかりしてフリーダを苦しめた旦那さんという肩書ばかりが有名になってきている印象のディエゴ・リベラ。彼の絵には今や時代遅れとされる政治思想が描かれていて、そのことが自分の内面を描いたフリーダが時代を問わず普遍的に評価されるのに比べて芸術として評価されにくいと認識していたけれど、自分の目でリベラの絵を見るとその夢の中みたいな色が魅力的だった。説明によるとどうやらとても皮肉な絵らしいのだけれど。



赤い!と思ったのがシケイロス。ダビッド・アルファロ・シケイロス。トロツキー暗殺未遂集団の主犯のこの人と友達になったら大変そうだけれど、絵からはエネルギーと勢いが噴出していた。

暗褐色な色合いとくすんだ赤のホセ・クレメンテ・オロスコの絵は暗い。でも荒涼として殺伐とした感じなのに、惹きつけられて目が離せなくなるような不思議な雰囲気がある。かっこいい。

三者三様の色。全然違うもんです。ほかにサトゥルニノ・エランの『収穫』も気になったけれど、ギエルモ・メサ『信仰心篤い人たちの頭部』のとりわけ不思議なものが描いてあるわけではないのに顔を白い布で覆った人たちの妖しさは強烈だった。

そういえばと私のこれまでの人生の中で一度だけ、なにか悪魔的なもの、目に見えない悪意のようなものの存在を感じたときのことを思い出した。それがメキシコシティのトロツキーの家。だれも人がいない平日の昼間、閑静な住宅街でトロツキーの墓がある庭には鳥がさえずっていたけれど室内に入ろうとすると急に気持ち悪くなって足がすくんで中に入れなかった。思いだしたらまたちょっと背筋がぞくっとした。

シケイロスがトロツキー暗殺に失敗した3ヶ月後、1940年8月20日、トロツキーは秘書の恋人になりすましたラモン・メルカデルによってピッケルで後頭部を打ち砕かれ、翌日収容先の病院で死亡した。




0 件のコメント:

コメントを投稿